産後こそ活用したいフェムテック

女性特有の健康課題に対して解決していくのがフェムテックですが、この中に産後の女性が抱えやすい問題も含まれています。
妊娠中の様々な問題を解消するためのアイテムや製品は多く、妊婦の体を労わることは多くの人に周知されています。

その反面、産後は赤ちゃんのお世話に追われ、自分自身のケアもままならない女性が多く、さらに産後であることは周囲からも認知されにくい現状もあります。

この記事では、産後の女性に起こる体の変化に加えて、産後のフェムテックに関してご紹介します。

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産後の女性に起こる体の変化

産後の女性

妊娠した女性は、約10か月の間お腹の中で新しい命を迎える準備を進めています。
中には、つわりを経験し、妊娠中の体や心の変化に戸惑う女性も多くいるでしょう。

そんな中、無事に出産を迎えられた喜びを感じながらも日々赤ちゃんと向き合い、時には不安を感じることもあります。

出産を終えた女性の体は、すぐに元通りに戻るわけではありません。
およそ6週間~8週間にかけて、少しずつ元の生活に戻すのが目安になっていますが、体の戻り方は一人ひとり異なります。
出産直後から子宮の収縮が始まり、産後2~3日はとても強い痛みが生じます。
さらに、授乳時におっぱいを吸われるたびに子宮が収縮し、より痛みを感じやすくなるでしょう。
約4週間程度で妊娠前の子宮の大きさに近づき、6週間~8週間にかけて妊娠前の大きさに戻るとされています。

それまで子宮の痛みが強く、夜も眠れない方がいるだけでなく、授乳回数も頻繁なのでゆっくり休めないことも多いです。
他にも会陰切開や帝王切開を出産時にした場合は、皮膚の引きつりや違和感が生じやすく、座っていられない場合もあるでしょう。

出産時や産後、痔になったり尿漏れが起こったり、腰痛や肌荒れなどに悩まされることもあり、いかに産後の女性にはトラブルが生じやすいかがわかります。
これらの内容は、産後の女性が必ず体験するわけでもなく、内容や辛さには個人差があります。
他にも、女性ホルモンのバランスが変わったことで、抜け毛や精神的な不安を感じやすい時期でもあり、それぞれの症状や悩みにあった解決が必要となるでしょう。

産後のフェムテック課題となるのは?

産後に注目したいフェムテック課題は何でしょうか?

産後のフェムテック課題

・妊娠線
・栄養バランス
・むくみ
・尿漏れ
・体型のくずれ
・痔
・寝不足
・ストレス
・疲れやすい
・不安
など

産後の女性の体には多くの負担が生じているだけでなく、育児をしながらなので自分のケアは後回しになっている方も多いでしょう。
産後、女性の体には今までに感じなかった症状や悩みを持つケースもあり、フェムテック製品やサービスの活用によって軽減や解消できる可能性を秘めています。

産後のフェムテックには自治体も積極的

区役所

産後のフェムテックは、女性をメインにサービスを展開することが多くなります。
そして、今までは企業がメインで取り組んでいましたが、現在は様々な自治体でも積極的に産後のフェムテックを取り入れています。
ここでは、自治体が取り入れている産後のフェムテック事例についてご紹介します。

福島市保健福祉センター こども未来部 こども家庭課 母子保健係

福島市の保健福祉センターでは、妊活中から産後、子育て期までの女性を支援できるように積極的なセミナーを開催しています。

これまでも妊活セミナーを開催していましたが、30代で妊活を始めた、40代ギリギリで治療しているが子どもができないなど、出産に至るまでの経過がスムーズにいかず、福島県の不妊専門相談センターに繋ぐことが多くありました。
自治体の窓口で相談を受けていると、妊娠前の段階で月経など自分の体に起こっていることをよく知らない、不妊治療したらすぐに子どもが授かるなど、現実と想像のギャップがあることが明らかになりました。

そこで、福島市はフェムテックサポートを行う企業とコラボレーションしてセミナーを開催し、妊娠が簡単なものではないこと、妊娠中や産後の体の変化、子育て期になるまでの包括的なセンターになれる取り組みをしています。

妊娠、出産、産後といった変化を福島市民に伝え、切れ目のない支援ができる体制を整えています。
参考:https://famione.com/local/interview/allsupport/

青森県上北郡東北町役場 保健衛生課

東北町役場は、人口約1.7万人の町であり、女性の体に対する悩みを気軽に相談できる場所となって欲しいという願いから、LINEでのサポート事業を開始しました。

今まで東北町は、青森県内でもトップクラスの支援をしていましたが、妊娠までの女性サポートには力を入れていない状態でした。
女性が相談したくても相談できる場所がなくて困っているのではないかという考えから、匿名でLINE相談の受付を開始しました。

女性の健康問題は妊娠や出産がメインになりがちですが、産後、月経、更年期、生理痛など様々な課題があり、そこに対して深い知識がないと関心も薄くなってしまいます。

女性自身に関心がないと男性に理解してもらうことも少ないと考え、プライバシーに配慮できるLINEの導入と活用を開始し、自分自身が女性特有の健康課題に目を向けることで高まっていくとしています。
参考:https://famione.com/local/interview/interview_tohoku/

産後の女性を中心とした「産後リカバリープロジェクト」

産後の夫婦

産後は女性の体が回復していくための大切な時期であり、産後3週間程度は十分な安静に努めて回復することが大切です。

産後、体へのダメージは交通事故レベルと言われることもあり、周囲からのサポートが欠かせない時期なのは間違いないでしょう。

しかし、現状では産後の女性を完全にサポートできる環境が整っていないだけでなく、男性が女性をサポートする意識も充分ではありません。
出産後、男性は「赤ちゃんにはママが大切で一番だ」と思い込んだ結果、育児を女性任せにするケースがあり、これによりホルモンの影響を受けやすい産後3ヶ月に心身の疲労が回復しないだけでなく疲弊することもあります。

このような内容から、産後の女性をいかにカバーするかという点がどれだけ重要かわかるでしょう。
そこで、一般社団法人日本リカバリー協会では「産後リカバリープロジェクト」を立ち上げ、WEBサイトからの情報発信、企業向けセミナーの開催、産後リカバリーイベントなどの活動を企画しています。
産後リカバリープロジェクトは、産後をターニングポイントとして正しい知識を広げていくことで健康やQOL、子どもの健全な成長などが目的です。

このプロジェクトが浸透することで、日本の子育て環境向上、自治体からのサポート強化、夫婦間の産後リカバリーを当たり前にするという目標もあり、段階的な産後のサポートを理解し、スムーズになるようにと考えています。

10月10日は産後リカバリーの日となり賛同企業も増えている

10月10日

「産後リカバリープロジェクト」では、10月10日を産後リカバリーの日と制定して活動をしています。

なぜ、10月10日が産後リカバリーの日になったかというと、妊娠期間を表す「十月十日(とつきとおか)」という言葉を由来とし、妊娠から出産まで同じ期間、心と体のリカバリーをして欲しいという願いを込めています。

出産直後、心身共に休まることなく多忙な産後の女性を周囲や家族が支えるだけでなく、社会全体で目を向けるきっかけになって欲しいという意味もあり、これに賛同した企業も増えてきました。

タカラベルモント株式会社のメディカル事業部では、産婦人科領域での医療機器製造、販売などをしてきた実績と「日本のお産を変えたい」というテーマから参画を決めています。
株式会社大広の大広フェムテック・フェムケアラボは、社会課題啓発活動を積極的に行い、解決するソリューションを増やしたいとしています。

このような内容から、今後も賛同企業が増えていくことが予想できるだけでなく、産後のフェムテックにも注目が集まる可能性が高いでしょう。

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ここまで、産後のフェムテックに関してご紹介してきました。

妊娠中に体の変化があることは知られていますが、産後にも変化が訪れること、変化が起こる内容などは知られていない部分も多くあります。
産後の女性は、体の変化に加えて心の変化も大きく、疲れやストレスなどで疲労困憊の状態になりやすいです。

今後、産後のフェムテックが浸透していき、周囲のサポートや家族の認知向上によって明るい未来や社会に変わる可能性を秘めています。
産後のフェムテックのひとつである、産後リカバリープロジェクトには産前産後の課題がまとめられています。ぜひチェックしてみてください。

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